「…ね、グリーン」
「あー?」
「ジム、どうにかなんないの?」

言われてから読んでいた本から顔を上げ、ジムを見渡す。…特に変わった様子はない。ジムトレーナーがいて挑戦者がいて。いつも通りの光景だ。
そうありのまま思ったことを伝えればコイツは正気か、という顔をされた。失礼な。

「これが普通の光景になってるってのが余計怖いんだけど」
「だからどこがだよ」
「どこの世界にこんなぐるぐるする床があるってのよ」
「はぁ?…ああ」

ぐるぐるする床…ジムの仕掛けのことか。言われてみれば、まぁ普通の建物のものではない、のだろう。当たり前の光景過ぎて何の疑問も抱かなかった。

「別に俺の趣味じゃない」
「うん、これが趣味だったらちょっと付き合いを遠慮する」

趣味じゃなくて良かった。コイツのことだから本気に違いない。
それにしても何で今さら、しかもコイツはいつも裏口から入ってくるからあの床は通らないハズだ。
と、考えるのも億劫なのでそのまま尋ねる。

「これのおかげで大分挑戦者が減ってると思うのと、見てるこっちの目が回りそう」
「あー…」
「あ、転んだ」

「痛そー」と言っている視線の先を見れば、挑戦者であろう少年が目が回ったのか足が滑ったのか、転んでいた。
すぐに近くのトレーナーが駆け寄るも、そいつも動く床に足をとられて転倒。何だこれ、コントか。
双方自力で起き上がり、その後すぐバトルを始めたのを見る限り無事ではあるが、確かに危ないのかもしれない。

「って言われてもなー、俺がやったわけじゃねーし」
「でも昔サカキさんだった頃はこんな酷くなかったよ。強制移動はあったけど」
「そういや昔はこんなにジムに仕掛け、なかったよなぁ…」
「最近のジムはすごいね、ジムリーダーと戦う時間よりジムで迷ってる時間の方が長い気がする」
「それはお前だけだろ」

シンオウのジム巡りから帰ってきた際のコイツの思い出は『ナギサジムで3日迷った』だった。いくらなんでも3日はないだろ、3日は。
でも確かにジムで迷うせいで挑戦者は減る、気もしなくはない。自分が挑戦者だった頃は迷うこともなかったから何とも言えないが。
だからと言って直せるかどうか聞かれれば、それもまた微妙。全てはゲー○リの仰せのままに、状態だ。

「目が回るなら見なきゃいいだろ」
「だって暇ー」
「しょうがねーな、どっか行くか」
「仕事しろよジムリーダー」
「いいんだよ、どうせ挑戦者なんか滅多に来ないんだ」
「いるじゃん目の前に」
「あいつ、まだカントーのジムバッジ5つしか持ってなかったから試合はしないのさ」
「わー仕事放棄ー」
「うるせ。ほら、暇なんだろ」

職務怠慢だ―とか何とか言いつつも立ち上がったの手をとり、裏口から外へ向かう。
ジムトレーナーが何か叫んだ気がしたが、そいつが来る前にピジョットを出し空へ。

「呼んでるよ」
「聞こえないな。さーてどこ行くか」
「んー…あ、レッドんとこは?」
「シロガネ山か…そういやしばらく行ってないし、会いに行ってやるか」
「じゃーその前に防寒具とって来なきゃね。あと食糧持ってかないとボルテッカ―飛んでくるよ」
「げっ…しゃーない、タマムシでも寄ってくるか」
「おー」

くだらない話をして、行き当たりばったりに生きていく。
そんな日常が何よりも愛おしいのは、きっと大事な人が傍にいるから。



そんな日常の幸せ







HGで「ジムの仕掛け進化し過ぎww」と笑った後Ptをやったらカントージョウトの仕掛けなんて仕掛けに見えなくなった。
ナギサジムで迷った時間→3,40分 デンジ戦→3分 (^q^)あるぇ
執筆 09.11.23
UP 10.02.26